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否定・否定文・否定語

[1]否定

[1-1]否定の種類

①文否定、文の全体を否定する。詳しく言うと、単文、複文においては、それらの全体を否定し、重文においては等位節の全体を否定する。
②構成素否定、文のうちの節、句、単語だけを否定する。詳しく言うと、単文においては句、単語だけを否定し、複文においては節、句、単語だけを否定し、重文においては等位節の句、単語だけを否定する。

構成素否定を理解した後でのほうが、文否定を理解しやすいかもしれない。例えば、

I have endured no shortage of challenges in my life.②
私の人生は苦難に事欠かなかった。

では、no は shortage だけを修飾して、no shortage of - で「事欠くことのない~」→「十分な~」という意味になる。

Not until yesterday did he change his mind.①
昨日まで彼は決心を変えなかった。

では、not は until yesterday だけを否定するのではない。否定語が文頭に来たので倒置が起こっている。

I will stop at nothing to help you democratize your country.②
私はあなたたちの国の民主化を支援するためには何でもするつもりだ。

では、at nothing は stop だけを修飾し、stop at nothing で「何事においても立ち止まらない」→「何でもする」という意味になる。

Writers will not accept anything, not even suggestion.①
作家は何も受け入れない。示唆さえもだ。

Not surprisingly, she refused him.(② surprisingly だけを否定)
驚くにあたいしないが、彼女は彼の申し出を断った。

He decided not to wait till his company fired him.(② to wait till his company fired him だけを否定)
彼は会社が自分を首にするまで待たないと決めた.

上の例文では、待つことを決めなかったのではなく、待たないことを決めたのである。

He is a not clever boy.(② clever だけを否定)
彼は頭の悪い少年だ。

Not all the students in this class can swim.①
このクラスのすべての生徒が泳げるわけではない。

このように文否定、構成素否定という概念はいわゆる「部分否定」と異なる。

[1-2]否定語の分類

否定語
 副詞
  not, never, neither, nor
 形容詞
  no
 代名詞
  none, nobody, no one, nothing
準否定語  副詞
  hardly, scarcely, rarely, seldom, little
 形容詞
  little, few

準否定語は、否定語と同様に any, ever, yet などと共起する。つまり、意味的だけでなく文法的にも否定語として扱われる。今後、単に否定語という言葉を用いたときは、準否定語も含むことにする。

I could /hardly/scarcely/ eat anything.
私はほとんど何も食べられなかった。

Few people have ever seen it.
それを見た人はほとんどいない。

Few people know it yet.
それを知っている人はまだほとんどいない。

[1-2-1] little が副詞として中位または文頭に置かれると、強い否定を表す。また、文頭に置かれると倒置が生じる。

He little knows the trouble he's caused.
彼は自分が起こした厄介に全く気付いていない。

Little did she dream that she would marry him.
彼女は彼と結婚するとは夢にも思っていなかった。

[1-3]否定語の作用領域。通常、否定語の作用はその右側全体に及び、文否定となる。それは、その右側に any, ever, yet などが出現することで確認できる。

I [didn't understand anything about it].
私はそれについて何も分からなかった。

I [haven't read the book yet].
私はその本をまだ読んでいない。

[1-3-1]だが、必ずしもそうではなく、構成素否定になることがある。それは some などの出現で確認できる。だが、some, any などがない場合は、文脈とコンマの有無、強勢、抑揚などで測り知るしかない。複文においてもである。

I [didn't listen to any of the speakers].(文否定)
私は講演者のうち何人かの話を聞かなかった。

I [didn't listen] to some of the speakers.(構成素否定)
私は講演者のうち何人かの話を聞かなかった。

I [didn't leave home because I was afraid of my father].(文否定)=
I left home, but it wasn't because I was afraid of my father.
私が家を出たのは父親が怖かったからではない。

I [didn't leave home] because I was afraid of my father.=
Because I was afraid of my father, I [didn't leave home].
父親が怖かったから、私は家を出なかった。

[2]文否定

[2-1]文否定であることを明確に示す方法

He isn't American.→
It is not so that John is American.
彼はアメリカ人ではない。

[2-2]これがあれば文否定であるということを証明できるもの。

①It is not so that 肯定文 で置き換えできる。
②肯定の付加疑問文を付けることができる。
③(and) /neither/nor/ 助動詞+主語を付加できる。
④否定語句を文頭にもってくると助動詞+主語の倒置が起こる。
⑤ not even ...を付加できる。

He isn't a teacher.→
It is not so that he is a teacher.①
彼は教師でない。

You don't like cats, do you?②
あなたは猫が嫌いですね。

He will not come, and neither will she.③
彼は来ないだろうし、彼女も来ないだろう。

Not until yesterday did he change his mind.④
昨日まで彼は決心を変えなかった。

The old man could not ingest anything, not even water.⑤
その老人は何も摂取できなかった。水さえもだ。

Those days, not even the President of the United States dared challenge CIA Director.
当時、合衆国大統領でさえもCIA長官につってかかることはなかった。

[2-3]主語が否定語であるまたは否定語を含むときも、文否定になる。この場合、否定語が文頭にあることになるが、倒置は生じない。

Nobody knew where he had gone.
誰も彼がどこに行ってしまったか知らなかった。

[2-4]副詞である準否定語/hardly/scarcely/, /seldom/rarely/があるとき, little が中位または文頭に来るとき、/little/few/が主語を修飾するときも文否定になる。


I could /hardly/scarcely/ eat anything.
私はほとんど何も食べられなかった。

/Seldom/Rarely/ does crime pay.
犯罪で得をすることはめったにない。

There is little hope, is there?
希望はほとんどないですね。

[2-4-1] hardly, scarcely, rarely, seldom が専ら否定的であるのに対して、barely は肯定的であることがある。

We had a falling-out ten years ago, and we've barely spoken since.(否定的)
私たちは10年前に喧嘩をし、以来、滅多に話さなくなった。

We barely caught the 12:00 flight.(肯定的)
12時のフライトにかろうじて間に合った。

[2-5]文否定を補助する語句

[2-5-1] much less (まして~ない), not even (~さえもない)は文否定の否定文にさらに否定されるものを付け加える。
Writers will not accept any suggestion, much less advice.
作家は、忠告は言うまでもなく、示唆も受け入れない。

Writers will not accept anything, not even suggestion.
作家は何も受け入れない。示唆さえもだ。

[2-5-1-1] much more (まして~である)は肯定文にさらに肯定されるものを付け加えるが、現代では用いられない。

[2-5-1-2]/let alone/not to speak of/not to mention/to say nothing of/ は文否定の否定文にさらに否定されるものを付け加えるだけでなく、肯定文にさらに肯定されるものを付け加えることができる。to say nothing of は、通例よくないことに用いられる。

The garden is a mess, to say nothing of the house.
家は言うまでもなく, 庭もひどいものだった。

It was a complete waste of time, to say nothing of the expense.
それは完全な時間の浪費だった. さらにその費用も大きかった。

She is fluent in three foreign languages, not to speak of her mother tongue.
彼女は母国語はもちろんのこと, 三外国語が流暢だ。

I can't speak English, let alone write it.
私は英語を話せない。まして書くことはできない。

[2-5-2] not if は「たとえ~であっても~ない」と文否定の前文を比喩的にまたは極論を挙げて強調する。if節の中は仮定法でも直接法でもよい。

I wouldn't let you touch me, not if I /am/was/were/ starving.
私はあなたに体を触らせたりしない。喩え飢え死にしても。

[2-5-2-1] not if に対して、if not は「~でないにしても」

Your view is accurate in many, if not all, respects.
君の見解はすべてでないにしても(少なくとも)多くの点で正確だ。

[2-6]否定語の位置と文否定、構成素否定の関係

[2-6-1]副詞の否定語が中位に置かれると多くの場合、文否定になる。だが、必ずしもそうではなく、副詞の否定語が中位に置かれた場合でも構成素否定のことがある。

I [didn't talk to any of them].(文否定)
私は彼らの誰にも話しかけなかった。

I [didn't talk] to some of them.(構成素否定)
私は彼らの何人かに話しかけなかった。

[2-6-2]否定語が文頭に置かれ助動詞→主語の倒置を生じると文否定である。

Never will I talk to them.
彼らに話しかけるつもりは全くない。

[2-6-3]主語に否定語が付くと、文否定になる。not より any が先んじる Any 主語 ... not ... は許されない。Not ... any 主語 ... は許され文否定になる。主語に否定語が付くと否定語が冒頭に来ることになるが、この場合に限り倒置は生じない。

×Anybody didn't come.→
〇Nobody came.
〇Not did anybody come.
誰も来なかった。

None of us were ready.
私たちは誰も準備ができていなかった。

[2-6-3-1]ただし、任意の any は否定語より前に置くことができる。この場合は構成素否定になる。

×Any students don't like exams.→
〇No students like exams.
〇Not do any students like exams.
試験が好きな学生はいない。

△Any student doesn't like exams.(任意の any)
どんな学生も試験が好きではない。

〇Any one who does that isn't trustworthy.(任意の any )
そんなことをする人は誰でも信用できない。

[2-6-4]主語以外の要素に否定語が付いて文否定になることがある。だが、not ... any ... のほうが自然である。

△We've had no lunch.→
〇We haven't had any lunch.
私たちはランチを食べていない。

△He saw neither man.→
〇He didn't see either man.
彼はどちらの男も見なかった。

△I've bought nothing for you.→
〇I haven't bought anything for you.
私は君には何も買っていない。

△I was in no way surprised.→
〇I wasn't in any way surprised.
〇In no way was I surprised.
私はどのようにも驚かなかった。

△I've seen them nowhere.→
〇I haven't seen them anywhere.
〇Nowhere have I seen them.
私は彼らをどこでも見かけていない。

〇He doesn't ever visit us.
〇He never visit us.
〇Never does he visit us.
彼は全然会いに来ない。

△He's at school no longer.→
〇He's not at school any longer.
〇No longer is he at school.
彼はもう学校に行っていない。

〇He couldn't speak, and he couldn't walk either.
〇He couldn't speak, /nor/(and) neither/ could he walk.
彼は話すことも歩くこともできなかった。

[2-7]以下の語句は文否定で用いられない。

[2-7-1] at last

He turned up at last.
彼はとうとう現れた。

×He didn't turn up at last.→
〇He didn't turn up after all.
彼は結局、来なかった。

[2-7-2] each

×Each of the girls was not dressed neatly.→
〇/Neither/None/ of the girls were dressed neatly.
どの少女も綺麗な服を着ていなかった。

[3]構成素否定

[3-1]構成素否定の文法的証

①It is not so that で置き換えできない。
②否定形の付加疑問文を付加できる。
③/(and) 主語+動詞, too./so 助動詞+主語./を付加できる。
④否定語句が文頭に来ても助動詞+主語の倒置が起こらない。
⑤not evenを付加できず、evenを付加できる。

He came home in no time, didn't he?②
彼はすぐ家に帰ってきましたね。

He is unhappy, and so is she.③
彼は不幸であり、彼女もそうだ。

In no heavy coat, she will look attractive.④
厚手のコートを着なければ、彼女は魅力的に見えるだろう。

Not long ago there were terrors, even in this neutral country.④⑤
テロがあったのはそんなに昔ではない。この中立国でさえも。

With no job, he would be happy.④
仕事がなければ、彼は幸せだろう。

それに対して、次は文否定である。

With no job would he be happy.
彼はどんな仕事をしても幸せにはならないだろう。

[3-2]文否定、構成素否定と not の位置

① not が中位、文頭以外にあるときは、構成素否定であり、not は否定する構成素の前に置かれる。
② not が中位にあるとき、文否定か、構成素否定か、どの構成素を否定するかは、強勢がどこにあるか、イタリック体または大文字か、any, ever, yet などの有無、文脈から判断するしかない。
③ not が文頭にあるときは、倒置が有るなら文否定であり、倒置が無いなら構成素否定であり、文頭部分が否定される。
④動詞を否定するときは not は中位にあらざるをえない。

以下に、構成素否定であるときは否定される構成素を[]で示すか大文字で示す。

[Not surprisingly], she refused him.③構成素否定
驚くにあたいしないが、彼女は彼の申し出を断った。

He decided [not to wait till his company fired him].①構成素否定
彼は会社が自分を首にするまで待たないと決めた。

He is a [not clever] boy.①構成素否定
彼は賢い少年ではない。

Try [not to break the window].①構成素否定
窓を割らないように心がけてくれ.

He didn't fly to Chicago.(文否定)
彼はシカゴに行かなかった。

HE didn't fly to Chicago.②構成素否定→
It was not him that flied to Chicago.
シカゴに飛行機で行ったのは彼ではない。

He didn't FLY to Chicago.②④構成素否定→
It was not by air that he went to Chicago.
彼がシカゴに行ったのは飛行機でではない。

He didn't fly to CHICAGO.②構成素否定→
It was not Chicago that John flew to.
彼が飛行機で行ったのはシカゴではない。

I [didn't listen] to some of the speakers.②構成素否定( some が使われている)
私は講演者のうち何人かの話を聞かなかった。

I didn't listen to any of the speakers.(文否定)
私はどの講演者の話も聞かなかった。

[3-3]A is not a B と A is no B の違い。前者は文否定、後者は構成素否定である。

He is [no fool].(構成素否定)
彼は馬鹿どころではない(天才だ)。

He is not a fool.(文否定)
彼は馬鹿ではない(馬鹿であることを否定しているだけで、賢いとは限らない)。

That's [no joke].(構成素否定)
それは冗談どころではない。

That's not a joke.(文否定)
それは冗談ではない。

[3-4]数量詞→否定語の順では動詞句のみを否定する構成素否定である。

Many arrows [did not hit the target].(動詞句否定)
的に当たらない矢は多かった。

Some of the men [didn't say anything].(動詞句否定)
その男たちのうち何人かは何も言わなかった。

[3-4-1]だが、数量詞→否定語の順の文は不自然であり、通常は以下のように書き換えられる。

Many arrows did not hit the target.(動詞句否定)→
A few arrows hit the target.
的に当たらない矢は多かった。

All cats don't like water.(動詞句否定)→
No cat likes water.

[3-4-1例外] some, 任意の any, every, several は否定語に先立つことができ、そうなった文は不自然でない。

Some of the men [didn't say anything].(動詞句否定)
その男たちのうち何人かは何も言わなかった。

Any spot on earth could not be so still.(動詞句否定)
地球上のどんなところもこんなに静かであるわけがない。

[3-5]否定語→数量詞の順では文否定である。

Not many arrows hit the target.(文否定)=
The target wasn't hit by many arrows.(文否定)
的に多くの矢が当たったわけではない。

None of the men say anything.(文否定)
その男たちは誰も何も言わなかった。

All cats [don't like water].(動詞句否定)
No cat likes water.(文否定)
ネコはすべて水が嫌いだ。(これらの二文は結果的に意味が等しくなる)

Not all cats like water.(文否定)
すべての猫が水が好きなわけではない。

[3-5例外]だが、数量詞が前にあっても文否定であることが稀にある。特にことわざで。

All is not gold that glitter.
光るものがすべて金ではない。

All men are not true.
すべての男が誠実なわけではない。

All is not paid that is promised.
約束されたものがすべて支払われるわけではない。

[4]否定辞上昇

[4]意味的には前方の主節ではなく後方の従属節が否定されているのだが、否定語が前方の主節に移動することがある。否定語を少しでも早く表出しようとするヨーロッパ語の傾向の表れである。

I don't think any spot on earth could be so still.
〇地球上のどんなところもこんなに静かであるわけがないと私は思う。
×地球上のどんなところもこんなに静かであると私は思わない。

上が否定辞上昇の例文である。それに対して、次の例文は否定辞上昇ではない。

They didn't know I'd ever seen her before.
私が以前に彼女と会ったことがあるということを彼らは知らなかった。

上の文と下の文では意味が大きく変わる。

They knew I'd never seen her before.
私は以前に彼女と会ったことがないということを彼らは知っていた。

[4-1]否定辞上昇が生じえるか生じえないかは動詞によってだいたい決まっている。

[4-1-1]否定辞上昇が生じえる動詞

思考、推測の動詞
believe, expect, suppose, guess, imagine, reckon, suspect, think, fancy, be supposed to
知覚、感覚の動詞
seem, appear, feel, look, sound

He didn't sound like he believed me.
〇彼は私の言うことを信じていない様子だった。
×彼は私の言うことを信じているような様子ではなかった。

We never considered the Soviets would actually back out of Afghanistan and negotiate their way out. It didn't seem a credible thing for them to do because we didn't think they were at all disposed to do that.
〇ソビエトがアフガニスタンから本当に撤退し撤退する方法を交渉することは決してないと私たちは思っていた。彼らにはそうする気持ちが全くないと私たちは思っていたので、彼らがそうすることは信じられないことに見えた。
×ソビエトがアフガニスタンから撤退し撤退する方法を交渉すると私たちは決して思わなかった。彼らにそうする気持ちがあると私たちは全く思わなかったのだから、彼らがそうすることは信じられることに見えなかった。

上の例文では否定辞上昇が3回生じている。

[4-1-2]否定辞上昇が生じえない動詞

推測
assume, surmise, presume, hope
認知
know

I didn't know you were here yet.
あなたが来ていることを私はまだ知らなかった。

上の例文で yet は you were here という従属節の中にあるのではなく、I didn't know という主節の中にある。

[4-2]否定辞上昇では any, ever, yet, need+原型不定詞などの否定文でのみ使われる語句が従位節で使用される。従位節が肯定形であるにも係らずである。

I don't think I'll ever try that again.
だが、私がもう一度それをやってみることはないと思う。

I don't think you need give it up.
君がそれをあきらめる必要はないと思う。

I do not believe, contrary to what appeared in one of the papers today, that there were any miscalculations.
今日、新聞の一つに出たのとは逆に、誤った評価は何らなかったと私は確信している。

[4-3] hope について。よい結果を推測する時は I hope, 悪い結果を推測する時は I'm afraid を用いる。前述のとおり、hope については否定辞上昇を生じない。

〇I hope (that) it won't rain tomorrow.
×I don't hope it will rain tomorrow.
明日は雨は降らないでしょう(そう願っています)。

I'm afraid (that) it will rain tomorrow.
明日は雨が降るでしょう(困りましたね)。

"Do you think it will be fine tomorrow?" "I hope so." = "I hope it will." ×"I hope it."
「明日晴れると思いますか」「晴れたらいいですね」

"Do you think it will rain tomorrow?" 〇"I hope not." = 〇"I hope it will not." ×"I don't hope so."
「明日雨が降ると思いますか」「降らなければいいですね」

"I'm afraid (it will)."
「困るけど、降るでしょう」

[4-4] I don't think so か I hope not か。I don't think so は否定辞上昇であり、「私はそうは思わない」ではなく「わたしは違うと思う」であり、積極的に否定する。それに対して、I hope not は「そうでないことを願う」であり、口調は穏やかである。

[4-5] It does not seem that -か It seems that - not -か? seem は否定辞上昇を生じえる動詞であり、前者である。

〇The man does not seem to understand what I am saying.=
〇It does not seem that the man understands what I am saying.
×The man seems not to understand what I am saying.=
×It seems that the man does not understand what I am saying.
その男は私が言っていることを理解できないように見える。

[5]否定語が複数生じる文

[5-1]累積否定。本来なら文否定を表すのに not 一つでよいはずだが、文中の否定形を取りうる語はすべて否定語にして文否定を表すこと。ロンドンの下町言葉やアメリカの黒人英語(black English)など非標準語に見られる。映画や小説ではよく出てくる。

No one ever said anything.(標準語)
No one never said nothing.(非標準語)
誰も何も言わなかった。

I never did any harm to anybody.(標準語)
I never did no harm to nobody.(非標準語)
私は誰にもどんな害も加えたことがない。

[5-2] 二重否定。以下は二重否定であり非標準ではない。

[5-2-1]まず、can について、以下のことを理解しておく必要がある。能力、可能性、許可の意味の can に not が付くと、助動詞否定も動詞句否定もありえる。それに対して、推測の意味の can に not が付くと、助動詞否定でしかない。例えば、

You cannot stay here.

について助動詞否定なら、許可の否定で禁止となり、「君はここに居てはいけない」という意味になる。それに対して、動詞句否定なら、~しないことの許可であり、「君はここに居ないこともできる」という意味になる。それに対して、例えば、

He cannot be a genius.

は、推測の意味をもち助動詞否定であり、推測を否定するので断言的になり「彼が天才であるはずがない」となる。

[5-2-1-1]能力、可能の can について、can't not には「~しないわけにいかない」= cannot help -ing という意味がある。一番目の not は助動詞否定(=文否定)の not であり、二番目の not は動詞句否定(構成素否定)の not である。だが、cannot help -ing のほうが普通である。

I can't [not obey my parents].= I can't help obeying my parents.
私は親の言うことには従わないわけにいかない。

You can't fish and not eat.= It is impossible that you fish and don't eat.
釣ったのに食べないなんてできないだろう。

[5-2-1-2] 推測の can について、can't not には「~ないということはありえない」という意味がある。一番目の not は助動詞否定(=文否定)の not であり、二番目の not は動詞句否定(構成素否定)の not である。

He couldn't [have not seen the paper] if he had been looking for it.
彼がその書類を探していたのなら、それを見ていないということはありえない。

[5-2-2] There is no A without B = Bを伴わないAはない=AはすべてBを伴う。

There is no rule without exceptions.
例外のない規則はない。

[5-2-3] not A without B =BせずにAすることはない=AするときはいつもBする。

She cannot argue without losing her temper.
彼女は議論をするときはいつもかんしゃくを起こす。

[5-2-4] cannot - too - 「いくら~してもしすぎることはない」。

You cannot be too careful when you drive a car.
車の運転にはいくら注意してもしすぎることはない。

[5-2-4-1] too の代わりに、enough, sufficiently, over-, 比較級なども用いられる。

I cannot thank him /enough/sufficiently/ for his help.
彼の助けにはいくら感謝しても十分と言えない。

Its value cannot be overestimated.
その価値を過大評価することなんてできない。

I could not have paid more attention to his advise.
私は彼の助言にそれ以上、注意を払うことができなかっただろう。

[5-2-5]その他

They does[n't visit us rarely].=
It isn't rarely that they visit us.
彼らが私たちを訪ねてくるのは稀ではない。

[6]反復簡略化否定

[6-1]否定文に続いて、簡略的に否定を表す表現

nor/(and) neither 助動詞+主語
much less, not even, not if

The despot will not accept any suggestion, much less advice.
その独裁者は示唆さえも受け入れない。忠告は言うまでもない。

The despot will not accept anything, not even suggestion.
その独裁者は何も受け入れない。示唆さえもだ。

I wouldn't let you touch me, not if I was starving.
私はあなたに体を触らせたりしない。餓死の瀬戸際にあっても。

[6-2]let alone/not to speak of/not to mention/to say nothing of は否定文にも肯定文にも続けることができる。それらのうち to say nothing of は通例、好ましくないことに用いられる。


It was a complete waste of time, to say nothing of the expense.

一歩先を行く英文法トップページ   COPYRIGHT(C)2000 OUR-EXISTENCE.NET ALL RIGHTS RESERVED