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冠詞の基本的意味用法

  冠詞においては詳細な意味よりまず基本的な意味を理解しておく必要がある。そうでなければ詳細な意味も危うくなる。

[1]定冠詞(the)の基本的意味用法

[1]名詞句が一般のものに属する特定のものであるだけでなく、何らかの形で限定されたものであることを示す。言い方を替えれば、名詞句が新情報ではなく旧情報であることを示す。これが基本的意味である。可算名詞だけでなく不可算名詞、固有名詞に付きうる。これが基本的用法である。基本的意味は以下に分類される。

[1-1]単純に名詞句が何らかの形で限定されたものであることを示す。

[1-1-1]先行の名詞句を指す。

Once there lived a miller in a small village. The miller had one daughter.
昔、小さな村に粉ひき屋が住んでいた。その粉ひき屋には娘が一人いた。

[1-1-2]状況から何を指しているか話し手にも聞き手にも分かるものを指す。

He made a doghouse and painted the roof red.
彼は犬小屋を作り、その屋根を赤に塗った。

Please shut the window.
窓を閉めてください。

この例文では窓が話し手と聞き手が今いる部屋の窓であることが分かる。窓が二面あってもそれらをまとめて一面として単数形を用いる。窓を全部閉めるか、一部閉めるかなどについては厳密でない。それは状況に委ねられる。

What is the time?
今何時ですか。

この例文では現在の時間であることが分かる。

To tell the truth, ...
本当のことを言うと。

この例文では話し手と聞き手が今、問題としてることについての事実であることが分かる。

See the doctor.
医者に行きなさい。

上はある地域で共有されている医者を指す。

人名とthe+職業名が同格になることがある。これもある地域で共有されている職業人を指す。

Mr. Brown the lawyer was a man of rugged countenance.
弁護士のブラウン氏は顔つきがいかつかった。

[1-2]唯一のものとして限定されるものであることを示す。客観的に見て唯一物であるものを指すことも、その社会の通念において唯一物であるものを指すこともある。

[1-2-1]客観的に見て唯一物であることを示す。

the sun, the earth, the moon, the sky, the sea, the world, the north, the south, ...

[1-2-1例外]唯一物の一つの様相を示し、ただ一つに限定されないときは不定冠詞(a)が付く。

a new moon(新月)
a red sun(赤い太陽)
a calm sea(穏やかな海)

[1-2-2]その社会の通念において唯一物であるものであることを示す。昔の一定時代の通念によることがあり、廃止されたものを指すことがある。大文字で始め固有名詞化するものがある。それも慣用による。

the King(王制の国では王は一人だけである)
the Queen(王制かつ一夫一婦制の国では女王は一人だけである。キリスト教の中でも特にカトリックは王にも一夫一婦制を義務付けた。)
the Bible(いくつかの宗教では至高の聖典は一つだけである)
the Lord(一神教においては神や主は唯一である)
the President (大統領制の国において大統領は一人だけである)
the Tower(ロンドン市民にとってのロンドン塔)

[1-2-2-1]集合名詞について、その社会の通念において唯一物であることを示す。現代では廃止された集団または分立された機関であることがある。数の一致について、それを一個の集団と見るときは単数扱い、それを構成する個人を意味するときは複数扱いになることが多い(単複両様扱い)。

the government(政府 単複両様扱い、米では単数扱い)
the police(警察 複数扱い)
the military(軍 単複両様扱い)
the public(大衆 単複両様扱い)
the aristocracy(貴族(階級) 単複両様扱い)
the clergy(聖職者(階級) 複数扱い)

以下の familiy は、唯一物として限定されるのではない単純に限定された集合名詞である。

The familiy took refuge in a dugout.
その家族は防空壕に避難した。

[1-2-3]句・節によって後ろから修飾されて唯一のものとして限定されるとき the が付く。その文の中で初めて限定されるので、新情報であり、there be構文の主語になれる。

I am studying the life of Vincent van Gogh.
私はビンセント・ファン・ゴッホの生涯を研究している。

He is the principal of this school.
彼はこの学校の校長だ。

それに対して、

He is a teacher of this school.
彼はこの学校の先生だ。

では、学校の教員は複数いるので、限定されず、不定冠詞(a)しかつかない。

[1-2-3補足1] There is S構文では、Sは既出のものではなく初出の新情報でなければならない。だから、通常は S には the が付かない。だが、句・節によって後ろから修飾されて初めて唯一のものとして限定され the が付くときは、新情報でありSになれる。

×There is the book on the desk.→
The book is on the desk.
その本は机の上にある。

At that time there was the attitude everywhere that Moscow and Chinese communists were tightly linked hand in hand.
当時はモスクワと中国共産主義者は固く結ばれているという風潮があった。

There's the possibility that his train has been delayed.
彼の列車が遅れている可能性がある。

[1-2-3補足2]
名詞句が句・節によって後ろから修飾されても、名詞句には必ずしも the が付くわけではない。以下にその例をいくつか挙げる。

[1-2-3補足2-1]まず、唯一のものとして限定されない特定のもの

He is a teacher of this school.
彼はこの学校の先生だ。

この例文は既に挙げた。

[1-2-3補足2-2]可算名詞単数形が一般のものを指すとき the が付かず、a が付く。 An orphan is a child whose parents are dead.
孤児とは両親が亡くなった子供のことである。

上の例文の一番目と二番目の不定冠詞(a, an)は代表を一つ挙げることによって一般のものであることを示す不定冠詞(a)の用法である。

[1-2-3補足2]可算名詞複数形、不可算名詞単数形が一般のものを指すとき、the が付かず、もちろん、a も付かず、無冠詞となる。

Literature that deals with our inner life is necessary above all for teenagers.
The literature that deals with our inner life is necessary above all for teenager.
私たちの内面世界を扱う文学は特に思春期に必要である。

抽象名詞を含む不可算名詞は無冠詞で一般のものを表す。①の無冠詞の下線部分は一般のものを表す。②の定冠詞付きの下線部分は限定されて唯一のものになっている。②では他の種の文学との区別を強調している。

[1-2-4]形容詞の最上級を含む句は唯一のものとして限定されるから the が付く。one of the 最上級+可算名詞複数形のように複数のものを指しても複数のものが限定されるからtheが付く。唯一のものを指す first, next, only, same, 形容詞の very なども同様。それらは最上級と同義語と言える。

As far as population is concerned, Tokyo-Kawasaki-Yokohama is the largest city in the world.
人口に関する限りで東京・川崎・横浜は世界で最大の都市である。

He is the first person to come.
彼が最初にやってきた。

Interpersonal functions are intentional functions in the same way as are speaking and writing.
発話や書字と同様に対人機能は意識的機能である。

[1-2-4例外1]last, nextも最上級の類義語だが、現在を基準時とするときは the が省略される。日常会話では現在を基準時にすることが多いので、慣用的に the が省略されたのである。

(無冠詞) last night(現在から見た昨夜)
the night before = the previous night(過去の基準時から見たその前の夜)
(無冠詞) next week(現在から見た来週)
the next week = the following week(過去の基準時から見たその次の週)

従って直接話法から間接話法への書き換えでは以下のようになる。

He said to me, "I will come back (無冠詞) next week."(彼が言ったときが基準時)⇒
He told me (that) he would come back /the next week/the following week/.(文全体の発話時が基準時)
彼は私に「僕は来週、帰ってくるよ」と言った。

He said to me, "I saw her (無冠詞) last month."(彼が言ったときが基準時)⇒
He told me (that) he had seen her /the month before/the previous month/.(文全体の発話時が基準時)
彼は私に「僕は先月、彼女と会った」と言った。

[1-2-4例外1の例外1]だが、過去を基準時とするときでも the が省略されることがある。

We met next day as he had arranged.
私たちは翌日、彼の手配通りに会った。

[1-2-4例外1の例外2]接続詞的に用いる next time では基準時に係らずtheが省略されることが多い。

(The) next time I go skiing, I'll wear warmer clothes.
今度スキーに行くときはもっと暖かい服を着よう。

[1-2-4例外2-1] 形容詞 only, last などで修飾される名詞句には通常、唯一のものとして定冠詞(the)が付くが、only child, last name などは「一人っ子」「名字」という一つの普通名詞と見なせ、一般の名詞句と同じ扱いをされる。つまり、必ずしも the が付くわけではない。

He was an only child―and spoiled.
彼は一人っ子で甘やかされて育った。

それに対して、特定の親の「唯一の子供」なら。
He was the only child of the dead parents.
彼はそれらの死んだ両親のただ一人の子だった。

the Last Supper
最後の晩餐

"Johnson" is a last name.
「ジョンソン」というのは姓の一つだ。

[1-2-4例外3] 同一物はただ一つのものとして限定されるので、same には通常、the が付くが、形容詞としての same についても副詞としての same についても、the が省略されることはある。

Animals feel pain /(the) same as we do/in (the) same way as we do/.(一番目は副詞、二番目は形容詞)
動物は私たちと同じように痛みを感じる。

I watched at the gate, same as you advised, Mr. Holmes.(副詞)
あなたの助言の通り門を見張っていました。ホームズさん。

[1-2-5]固有名詞(人名)に付けて「かの有名な」を意味する。話し手にとっては唯一のものである。発音はジーで強勢がある。書き言葉では斜字体か大文字で示す。

'My name is James Bond.' 'What, not the James Bond?'
「私の名前はジェームズ・ボンドです」「何ですって。あのジェームズ・ボンドではないでしょうね」

[1-2-6]「真の, 最高の、唯一の, 典型的な」を指す。話し手にとっては唯一のものである。発音はジーで強勢がある。書き言葉では斜字体か大文字で示す。

She is the pianist of the day.
彼女は現代の唯一無二のピアニストだ。

[1-2-6-1]複数のものが「真の…」であることを言いたい場合は後続する名詞を複数形にすることも可能である。

The soviet side would say, "We are the Marxists." And then the Chinese would say, "No, we are the Marxists."
ソビエト側は言ったものだ。「私たちがマルクス主義者だ」
それから中国人は言ったものだ。「いや、私たちがマルクス主義者だ」

上の例文と "We are Marxists." "Yes, we are Marxists, too." とを対比していただきたい。/Yes/No/ を入れるとすれば、上では No であり、下では Yes である。また、上では too は入りえない。

[2]定冠詞(the)の派生的慣用的意味用法

[2] 上の基本から派生し、他の冠詞や形容詞では指しえないものを指し、慣用的に定着したものがある。

[2-1] 「真の, 最高の、唯一の, 典型的な」の意味から派生して、the+単数名詞で一般のもの(総称)を指す。「本来の」という意味を含む。

The tiger is a dangerous animal.
トラは危険な動物である。

本来のトラを意味している。サーカスのトラも本来は危険ということが言いたいのである。

不定冠詞+可算名詞単数形、無冠詞可算名詞複数形、無冠詞不可算名詞も総称を表すことができるが、そのように意味が微妙に異なる。

[2-2] 普通名詞がもつ主要な抽象的属性を指す。つまり、普通名詞を抽象名詞化する。比喩的表現にもなる

The pen is mightier than the sword.
ペンは剣より強し(言論は武力より強い)。

What is learned in the cradle is carried to the tomb.
三つ子の魂百まで(乳幼児期に形成された習性は生涯、減退しない)。

The Child is father of the Man.
子供が人間を形成する。

上の例文で father が無冠詞であるのは形容詞的に使われているためである。

I play the piano.
私はピアノを弾く。

The violin is more difficult than the piano.
バイオリンはピアノより難しい。

上の二つの例文では、不定冠詞+単数形、無冠詞複数形は不可である。それは、バイオリンやピアノという楽器を使うことではなく、音楽を奏でることを強調したいからである。

[2-3] 共通で唯一である単位を指す。

He gets paid by the hour.
彼は時間給で働いている。

This car does thirty miles to the gallon.
この車は1ガロンで30マイル走る。

The exchange rate will soon be $2 to the pound.
為替レートはまもなく1ポンドにつき2ドルになるだろう。

[2-4] in the morning, in the afternoon について、今日のまたはその日の午前、午後のように状況から限定されるから the が付いた。むしろ、at noon, at night などでは早々とtheが省略されたのである。さらに一般の午前、午後などについても the が残ったのである。

I talked with her in the morning.
朝、彼女と話しました(習慣ではなく一時的に)。

We do a lot of work in the morning.
午前には仕事がたくさんある(最近の習慣)。

そのように、一時的動作が行われる時間だけでなく、習慣的動作が行われる時間にも in the /morning/afternoon/ を用いることができる。

[2-5] 他動詞+目的語+前置詞+the+目的語の身体の部分。theを付けるのも所有格を付けるのも文法的であるが、所有格の反復を避けるために慣用的に the が用いられるようになった。

(1) He took her hand.
(2) He took her by the hand.
(3) He took her by her hand.
彼は彼女の手を取った。

(1)では動詞の目的語の手が強調され、(2)では前置詞の目的語の手より動詞の目的語の彼女が強調される。だから、(2)では「彼女の手をつかむことによって、彼女をつかまえた」という意味が強い。(3)は(2)の慣用に押されて稀である。

He kissed me on the forehead.
彼は私の額にキスをした。

上の例文のように前置詞として by だけが用いられるのではない。

[2-5例外]身体の部分に形容詞が付いている場合、所有格を付けることが多い。形容詞が付くことによって慣用から解放されたのである。

Somebody kissed my grandfather on his bald forehead.
誰かが祖父の禿げた額にキスをした。

[2-6] the+/形容詞/分詞/で名詞句となり、形容詞または分詞を名詞化する。意味は以下のように分類される。

[2-6-1]一般の~な人々、物(総称)を指す。

the rich(金持ち)⇔the poor(貧者)
the living(生きている人々)⇔the dead(死者)
the old(高齢者)⇔the young(若者)

A painting by his of the tortured and dying is seared into my memory.(過去分詞と現在分詞)
彼による拷問され死んでいく人々の絵画は私の記憶に焼き付いている。

[2-6-1例外1] and で結ばれて対句になるときは慣用的に無冠詞。

(無冠詞) Young and (無冠詞) old gathered together.
老いも若きも共に集まった。

[2-6-1例外2]国民の総称として、①the+国名形容詞、②the+国名形容詞兼国民を表す名詞の複数形(-s)、③the+国名形容詞兼国民を表す名詞の複数形(単複同形)の三型がある。

①the+国名形容詞で国民の総称。複数扱い。個人を表す時は、/a/the/ 国名形容詞 /person/man/woman/ などになる。

the British
the Scottish
the Irish
the French
the Spanish
the Dutch

The French have undergone not a little despotism, too.
フランス人も少なからぬ専制を経験してきた。

She will marry a British man next month.(個人)
彼女は来月、イギリス人と結婚する予定だ。

②the+国民形容詞兼国民を表す名詞の複数形(-s)で国民の総称。特定の限定された複数の人を指すことがある。また、theの付かない複数形で総称を表すことがある。theの付かない複数形のほうが曖昧で批評が穏やかになる。

the Americans
the Germans
the Italians
the Greeks,

The Americans fought with the Germans in the World War Ⅱ.(国民の総称)
アメリカ人は第二次世界大戦でドイツ人と戦った。

The Italian who I recommend to you haven't acquired U.S. citizenship yet.(後続する語句で修飾されて唯一のものとして限定され the が付いた。)
私があなたに推薦するイタリア人はまだアメリカ合衆国の国籍を取っていません。

Americans take pride in the Washington Monument.(総称だが、たいたいのアメリカ人はという意味で、厳密さはない。)
アメリカ人はワシントン・モニュメントに誇りをもっている。

③the+国民形容詞兼国民を表す名詞の複数形(ただし単複同形)で国民の総称。同様に特定の限定された単数または複数の人を指すことがある。

the Japanese
the Chinese

[2-6-2]特定の限定された~な人、物を指す。だが、一般の~な人、物を指すこともある。

the deceased(故人)
the wounded(負傷者)
the accused(被告人)

The accused was found not guilty.(特定の限定された被告人)
その被告人は無罪になった。

The accused are rarely found not guilty in those days.(一般の被告人)
当時は被告人が無罪になることは滅多になかった。

The dying and (the) wounded in the railway accident were cared for on site.(特定の瀕死者や負傷者)
その鉄道事故の瀕死者や負傷者が現場で手当を受けた。

[2-6-3]形容詞を抽象名詞化する。そのように抽象名詞化されやすい形容詞が、上のように具象名詞化し、一般の~な人、物、特定の限定された人、物を指すことがある。

We must seek after the true, the good and the beautiful.(抽象名詞化)
私たちは真善美を追求しなければならない。

The good die young.(具象名詞化、一般の人、物)
善良な人々は長生きしない。

The unexpected has happened.(具象名詞化、特定のもの)
予測のできないことが起こった。

You are asking me to do the impossible.(具象名詞化、一般のもの)
君は私に不可能なことをしてくれと頼んでいる。

[3]固有名詞と定冠詞

固有名詞に定冠詞 the が付く場合を挙げてみる。

[3-1]固有名詞の部分を限定するとき、theを付ける。それに対して、全体を叙述するときは付けない。

the young Shakespeare
若き日のシェークスピア(若い頃に限定する)
the Europe of today
今日のヨーロッパ(現代に限定する)
the late Mr. Smith
故スミス氏(他のスミス氏ではなく亡くなったスミス氏に限定する、または、生前のスミス氏ではなく死後のスミス氏に限定する)

(無冠詞)poor Smith
かわいそうなスミス(全体を叙述する。全体がかわいそうだと言っているのであって、かわいそうな部分に限定しているわけではない。)
(無冠詞)immortal Shakespeare
不滅のシェークスピア(全体を叙述する。全体が不滅だと言っているのであって、不滅の部分に限定しているわけではない。)

[3-2]「あの有名な」を意味するとき、theを付ける。

the wise Solon
かの賢明なソロン

[3-3]本来、普通名詞だが、唯一物になって固有名詞化したもの。

[3-3-1]普通名詞だけで唯一のものになっている場合、theを付ける。その社会の通念において唯一のものであるものを含む。

the Tower(ロンドン市民にとってのロンドン塔)
the Channel(イギリス人にとってのイギリス海峡またはドーバー海峡)

[3-3-2]形容詞+普通名詞で唯一のものになっている場合 the を付ける。その社会の通念において唯一のものであるものを含む。theは普通名詞を修飾するが、普通名詞が省略されて、theが残ることがある。また、形容詞が省略されてtheが残ると[3-3-1]になる。

the Black Sea
黒海
the Pacific (Ocean)
太平洋
the North Sea
北海

[3-4]/固有名詞(形容詞的用法)/固有形容詞/+普通名詞について

唯一のものとして限定されているので、基本的には the を付ける。全体が固有名詞のように扱われ、後続の普通名詞も大文字で始めることが多い。

the Helsinki Declaration
ヘルシンキ宣言

the Western media
西側のメディア

[3-4-1]公共の機関、施設を表すときは the を付けない。よく使われるので慣用的に the が省略された。

Victoria Station
ビクトリア駅
Harvard University
ハーバード大学
Westminster Abbey
ウエストミンスター寺院
Buckingham Palace
バッキンガム宮殿
Kobe Port =the Port of Kobe
神戸港
Heathrow Airport
ヒースロー空港
Hyde Park
ハイドパーク
Scotland Yard
ロンドン警視庁

[3-4-1例外]船名にはtheを付け、普通名詞は省略される。

the Titanic
タイタニック号

[3-4-2]自然の地形、領域を表すときはtheを付ける。普通名詞が省略されることがある。

the Mississippi (River)
ミシシッピ川
the Hudson River
ハドソン川
the Crimea Peninsula
クリミア半島
the Sahara (Desert)
サハラ砂漠
the Argentine (Republic)

[3-5]普通名詞+固有名詞

[3-5-1]普通名詞+固有名詞において、普通名詞が称号のように機能しているなら、冠詞は付けない。普通名詞が称号として冠詞のように機能しているから。称号も大文字で始める

President Bush
ブッシュ大統領
Queen Elizabeth
エリザベス女王
Lake Michigan
ミシガン湖
Mount Everest
エベレスト山

[3-5-2]普通名詞+固有名詞において、両者が同格となっているなら、a か the が普通名詞に付くか普通名詞が複数形になる、唯一のものとして限定されるなら the が付き、限定されないなら a が付くか普通名詞が複数形になる。

In the 1930s, US marines put the tyrant Tacho Somoza in power. More than forty years later, Nicaragua was still ruled by a Somoza. A politically moderate newspaper owner, Pedro Joaqin Chamorro dared to challenge the dictatorship.
1930年代に米海兵隊は暴君タチョー・サモーザを権力の座に据えた。40年以上後にもニカラグアはまだサモーザ家の一人に支配されていた。政治的に穏健な新聞の所有者ペドロ・ジョアキン・チャモローは敢えてその独裁に挑戦した。

[3-6]普通名詞+前置詞+固有名詞では普通名詞にtheを付ける。これは句・節によって後ろから修飾され限定されて唯一のものになると the が付くに準じたもの。

the University of Oxford
オックスフォード大学
the Lake of Geneva
ジュネーブ湖

[3-7]普通名詞に由来する固有名詞には the を付ける。これは「真の, 最高の、唯一の, 典型的な」を表すには the を付けるに準じたもの。

the Lizard = Lizard Peninsula
リザード半島
the Strand
ストランド通り

[3-8]複数形の固有名詞には the を付ける。

the Wilsons
ウイルソン一家
the Rockies = the Rocky Mountains
ロッキー山脈
the Canaries = the Canary Islands
カナリア諸島
the New York Yankees
ニューヨークヤンキーズ

The Smiths are coming tonight.
今夜、スミス一家が来る予定だ。

the Times
タイムズ(イギリスの新聞)
the New York Times
ニューヨークタイムズ

それに対して、

(無冠詞)Time
タイム(アメリカの週刊誌)

[3-9]略す前に定冠詞が付いている場合、略号でも通常 the が付く。ただし、略号が形容詞的に使われる場合は the が省略されることが多い。

The US started to retreat from Vietnam in 1973.
米国は1973年にベトナムから撤退を開始した。

(無冠詞)US troops started to retreat from Vietnam in 1973.(形容詞的)
米軍は1973年にベトナムから撤退を開始した。

The KGB put vast arrays of captured (無冠詞) CIA equipment on show.(形容詞的)
KGBは押収したCIAの諸々の機器を公開した。

[3-9-1]本来的に the が付く略号が所有格になるときは、the は省略されない。

The Korean War provided further blows to the CIA's self-confidence, highlighting the gaps between their ability and the KGB's in forecasting and assessment.
朝鮮戦争は、予想し評価することにおける彼らとKGBの能力の差を際立たせて、CIAの自信にさらなる打撃を加えた。

[4]不定冠詞(a, an)の基本的意味用法


[4]名詞句が一般のものに属する特定のものであり、[4-1]会話や文章の中で初出であり未だ聞き手には限定されていないが、話し手の中では限定されていることを示す。そのようにして限定されたものとまだ限定されていないものを区別し、聞き手の誤解を予防する機能をもつ。または、[4-2]話し手も未だ限定していないことまたは[4-3]そもそも限定する必要がないことを示す。これが基本的意味である。また、可算名詞単数形だけに付く。これが基本的用法である。

[4-1]名詞句が一般のものに属する特定のものであり、会話や文章の中で初出であり未だ限定されていないが、話し手の中では限定されていることを示す。「ある」と訳せる。

My brother's going out with a French girl.
私の兄(弟)はあるフランス娘と付き合っている。

The accident occurred on a Friday afternoon.
その事故はある金曜の午後に起こった。

My father died on a Saturday.
父はある土曜日に亡くなった。

It is true in a sense.
それはある意味で正しい。

上の例文で、聞き手が In what sense?(どの意味で)と尋ねると、話し手は明確に答えられないかもしれないが、話し手は漠然とでも限定している。

[4-2]名詞句が一般のものに属する特定のものであり、話し手も未だ限定していないことを示す。

I want to employ a secretary, a Spanish speaker.
私はスペイン語のできる秘書を雇いたい。

I want to marry a girl who is a pianist.
私はピアニストの女の子と結婚したいと思っている。

話し手も結婚相手を限定していない、つまり、結婚したい相手はまだ見つかっていないなら、[4-2]の例文である。だが、特定の限定された女の子を指すことも可能であり、[4-1]の例文でもありえる。それに対して、関係詞を非制限用法にすると、[4-1]の例文でしかない。

I want to marry a girl, who is a pianist.
私はある女の子と結婚したいと思っている。彼女はピアニストだ。

I want to marry the girl who is the best pianist in my school.
私は学校で一番ピアノがうまい女の子と結婚したいと思っている。

上の例文では、girl に who 以下の関係詞節に限定されしかも最上級で限定されているので唯一物として限定され the が付く。だが、これだけでは話し手が誰が一番うまいのかを限定しているかは不明である。

[4-3]話し手が未だ限定していないだけでなく、そもそも限定する必要がないこともある。

"I want a pen. Any will do." "Here is one."
「私はペンが欲しい。どんなものでもよい。」「ここに一つあるよ」

上の例文では、pen を限定する必要がないし限定されていない。だから、it で受けられない。one で受けられる。この one は a penを代用する代名詞である。

"I've lost a pen. It is expensive one."
「私はあるペンを探している。それは高価なやつだ。」

上の例文では pen は話し手の中で限定されている。これは[4-1]の例文である。itで受けられる。

同じ名詞が続いても同一物でなく限定されないときは the は付かない。

Everybody must make a short speech. You must make a short speech, too.

[5]不定冠詞(a,an)の派生的慣用的意味


上が不定冠詞の基本的意味である。下がその基本から慣用的に派生する意味である。

[5-1]総称=every, any。名詞句が一般のものであることを示す。一つを代表として挙げて「任意の」という意味。

A cat has nine lives.
猫に九生あり。

一般のものを説明するのに便利である。上の例文で複数形で一般のものを説明すると、nine が誤解を生じる恐れがある。

He has nine lives like a cat.
彼は猫のようにしぶとい

An orphan is a child whose parents are dead.
孤児とは両親が亡くなった子供のことである。

一番目と二番目の不定冠詞(a, an)はともに名詞句が総称であることを示す。このように後続する関係詞節に限定されるからといって必ず定冠詞(the)が付くわけではない。

[5-1-1]一つの典型について述べるため、一般のものの全体を指すことはできない。

×A panda is becoming extinguished.→
○Pandas are becoming extinguished.
○The panda is becoming extinguished.
パンダは絶滅しかけている。

[5-1-2]補語に不定冠詞(a, an)を付けると、主語が一般のものに属することを示すことができる。

My father is a teacher.
私の父は教師です。

He remained a bachelor all his life.
彼は生涯、独身だった。

[5-1-3]as 原級 as, likeなどに続く直喩で一般の~のようにという意味を表す。

as busy as a bee
非常に(蜜蜂のように)忙しい
as cunning as a fox
非常に(狐のように)ずる賢い
as cool as a cucumber
非常に(キューリのように)冷静である
as dead as a doornail
完全に(鋲釘のように)死んでいる
as gay as a lark
たいへん(ヒバリのように)陽気である
as poor as a church mouse
非常に(教会のネズミのように)貧しい
as proud as a peacock
たいへん(クジャクのように)自尊心が高い
as timid as a hare
非常に(ノウサギのように)臆病な

[5-1-3例外]

不可算名詞、可算名詞複数形、固有名詞には a は付かない。
as dry as dust
無味乾燥な(不可算名詞)
The twins are (as) like as two peas (in a pod).
その双子は瓜二つだ(可算名詞複数形)。
as wise as Solomon
たいへん(ソロモンのように)賢い(固有名詞)

[5-2]不可算名詞を可算名詞化し派生的意味を付与する。複数あるなら無冠詞の複数形が用いられる。

[5-2-1]不可算の抽象名詞を具体的個物とする。

An air conditioner is a necessity in a hot country like this.
エアコンはこのように暑い国では必需品だ。

It is a pity that you can't stay longer.
もっと長く居てもらえないのが残念です。

You would be doing him a kindness by telling him the truth.
彼に本当のことを言ってやればそれが親切な行為をしていることになる。

I sincerely appreciate your many kindnesses to me.
いろいろとご親切にしていただいて心より感謝いたします。

上の例文のように複数あるなら複数形になる。

[5-2-2]不可算の物質名詞を具体的個物とする。

She got an iron for a wedding present.
彼女は結婚式のプレゼントにアイロンをもらった。

[5-2-3]不可算名詞にも複数の種類があることに着目し、それらの種類の限定されていない一つであることを表す。抽象名詞でも物質名詞でも。

Temperance is a virtue.
節制は一種の美徳だ。

Mahogany is a wood.
マホガニーは木材の一種だ。

This must be a different tea from the one we usually buy.
これはわたしたちがいつも買うのとは違った種類の紅茶に違いない。

[5-2-3-1]特に不可算名詞に形容詞が付く場合、種類が限定され、不定冠詞 a が付くことが多い。

Revolutionaries often assert their legitimacy by adopting a halfway democracy.
革命家が中途半端な民主制を採用することによって自分たちの正当性を主張することはよくあることだ。


A heavy rain began to fall.
激しい雨が降り始めた。

この例文おいて、形容詞がなければ The rain began to fall とするところである。この the は唯一物であることを示す the である。

[5-2-4]原型不定詞、動名詞も具体的行為や種類を表すときは可算名詞化し、不定冠詞が付きうる。

Let's go for a swim.
泳ぎに行こう。

Let's /go for/have/take/ a walk.
散歩に行こう。

A knocking at the door was heard.
ドアをノックする音が聞こえた。

I began to take a liking for her very soon.
私はすぐさま彼女が好きになり始めた。

You must give them a fair hearing.
君は彼らの言うことを公平に聞かなければならない。

[5-2-5]不可算名詞の一部分を表す。意味的に a piece of などまたは some と等しい。成句で用いられることが多い。成句の中で a piece of, some などはあまり用いられない。

For a while
しばらくの間
at a distance
やや離れた所に

He has a knowledge of Greek.
彼はギリシア語を少々知っている。

There was a silence.
しばらくの間、沈黙があった。

[5-2-6]固有名詞を可算名詞化することもある。「~という人」「~のような人」「~家の一人」「~の製品」などの意味になる。

A Mr. Wilson came to see you when you were away.
あなたが留守の間にウイルソンという人が会いに来られました。

He thinks he is an Edison.
彼は自分をエジソンのような発明家だと思っている。(唯一無二とは思っていない)

He thinks he is the Edison of the 21th century.(唯一無二と思っているから the が付く)
彼は自分を二十一世紀の比類のないエジソンのような発明家だと思っている。

In the 1930s, US marines put the tyrant Tacho Somoza in power. More than forty years later, Nicaragua was still ruled by a Somoza.
1930年代に米海兵隊は暴君タチョー・サモーザを政権に据えた。40年以上後にもニカラグアはまだサモーザ家の一人に支配されていた。

the Somozas ならサモーザ家の人々になる。

My car is a Jaguar.
私の車はジャガー(社の製品)だ。

[5-3]通常、唯一物を表す名詞には定冠詞(the)が付くが、そのような名詞に the の代わりに付く不定冠詞(a, an)は、その名詞に唯一物でない意味をもたせる。

[5-3-1]唯一物の一つの様相の意味をもたせる。

the sun に対して
a flaming sun
燃えるような太陽
the moon に対して
a full moon
満月

燃えるような太陽はよく現れ、満月は一カ月ごとに現れ、それらは唯一物とは言えない。

[5-3-2]最上級、序数詞、最上級類似語 を含む名詞句は通常、唯一のものとして限定されるので、定冠詞(the)が付くが、限定されないとき、不定冠詞(a)が付いたり複数形になることがある。

[5-3-2-1]「もう一つ追加で」という意味をもつとき。another(an other)と同様。

He tried to jump across the river a third time.
彼は(二回やった後で)もう一度、川を飛び越えようとした。

それに対して、

He passed the examination on /his/×a/ third trial.
彼は三度目の試験で合格した。

[5-3-2-2]最上級、序数詞、最上級類似語 を含む名詞句が一つの可算名詞のような意味をもつとき、

I went to law as a last resort.(last resort で一つの可算名詞として機能する)
わたしは最後の手段として法律に訴えた。

Litigation should be a last resort.(同上)
訴訟は最後の手段であるべきだ。

A first attempt was made.
最初の試みがなされた。(同上)

He is an only son, but he is not spoiled.(同上)
彼は一人っ子だが、甘やかされていない。

[5-3-3]不定冠詞(a, an)が固有名詞に付いて一つの様相の意味をもたせることがある。

An irate President Eisenhower declared a complete trade embargo to Cuba.
怒ったアイゼンハワー大統領はキューバに対する完全禁輸を宣言した。

[5-4]一つの=one の意味をもつ不定冠詞(a, an)。現代では one の代用である。意味は one より弱い。一つのを強調するときは発音は[ei]で強勢がある。

A bird in the hand is worth two in the bush.
手に入れた一羽の鳥は薮の中の二羽の値打ちがある。

Rome was not built in a day.
ローマは一日にして成らず。

下のような例文では強勢はない。厳密な60分ではなく、50分だったかもしれないし、70分だったかもしれないからである。

I waited for an hour.
私は一時間待った。

[5-4-1]not a ~で一つもないという強い否定を表す。

I don't remember a word of what he said.
彼が言ったことをわたしは一言も覚えていない。

[5-4-2]集合や数量の単位が一つあることを示す。

a flock of birds
一群の鳥
a host of daffodils
黄水仙の群生
a hundred (of) books
百冊の本
half a dozen
半ダース

[5-4-3] [5-4-2]から派生して、a+X(不可算名詞を容れる容器や不可算名詞の部分を表す可算名詞)+of+不可算名詞で、不可算名詞を可算可能にする。数詞または不定数詞+Xの複数形+不可算名詞の形も可能である。不可算名詞としては物質名詞も抽象名詞も可能である。

A cup of coffee(物質名詞)
一杯のコーヒー

Two cups of coffee
二杯のコーヒー

/A piece/An item/ of information(抽象名詞)
一つの情報

/Some pieces/Some items/ of information いくつかの情報

[5-4-4][5-4-2]から派生して、a+不定の数量を表す名詞+of+可算名詞または不可算名詞で不定の数量をもつものを表す。多数多量を表すものは、数量を表す名詞の複数形+of+可算名詞または不可算名詞の形もとることが多い。

a lot of = lots of
a pile of = piles of
a heap of = heaps of
a stack of = stacks of
以上、/多数/多量/の

piles of troubles(多くの困難、可算名詞)
a stack of work(多くの仕事、不可算名詞)
stacks of money(大金、不可算名詞)

a bit of
a touch of
a drop of
a pinch of
a grain of
以上、/少数/少量/の

There isn't a grain of truth in the story.(不可算名詞)
その話には真実のかけらもない。

[5-4-4注意] 少数、少量を表す場合は複数形にならないか、別の意味をもつ。例えば、bits of では「~の破片」の意味になる。

The floor was covered with bits of broken glass. 床は割れたグラスの破片で覆われていた。
[5-4-5]一つのの意味から派生して、しばしば of a -で同一の。古語でありことわざなどで残る。現代では of the same - などが用いられる。

Birds of a feather flock together.(ことわざ)
類は友を呼ぶ。

Two of a trade seldom agree.(ことわざ)
商売敵(同一業者)が合意することはほとんどない。

The eggs are all of a size.(古めかしい)→
The eggs are all of the same size.
その卵はすべて同じ大きさです。

[5-4-6]many, few, little など不定数詞の前に付いてそれらの意味に変化を加える。

[5-4-6-1]few, little という否定的意味の不定数詞に付いて、「少しはある」ことを意味する。

A little learning is a dangerous thing.
生兵法は大けがのもと。

[5-4-6-2]a /great/good/ many - の形で、= very many。great の方が意味は強い。それらが修飾する名詞は a が付いても複数形で複数扱い。

A good many books in that library were burned by the fire.
火事であの図書館の相当数の本が焼けました。

[5-4-6-3] many a - で多くのを意味するが、これは単数扱い。

[5-4-6-4] quite a /few/little/bit/, a /good/fair/ few で逆に/多数/多量/のの意味になる。

[5-4-6-5] それに対して、not a few/little, no few/little, quite a lot of - ではかなり/多数/多量/のの意味になる。

[5-5]「~につき」。前置詞に由来し、不定冠詞とは別由来。

They stage two Shakespeare plays a year.
彼らは年に2本のシェイクスピア劇を上演する.

[6]冠詞の発音

[6-1]冠詞そのものを意味するときは、定冠詞(the)は「ジー」、不定冠詞(a)は[ei]と発音する。

This usage of the and a is wrong.
この「the」と「a」の使い方は間違っている。

[6-2]固有名詞(人名)に付けて「かの有名な」を意味するときとと普通名詞に付けて「真の, 最高の、唯一の, 典型的な」を指すときは、定冠詞(the)を「ジー」と発音する。

'My name is James Bond.' 'What, not the James Bond?'
「私の名前はジェームズ・ボンドです」「何ですって。あのジェームズ・ボンドではないでしょうね」

She is the pianist of the day.
彼女は現代の唯一無二のピアニストだ。

[6-3]「一つの」の意味を強調するときは、不定冠詞(a)を[ei]と発音する。

A bird in the hand is worth two in the bush.
手に入れた一羽の鳥は薮の中の二羽の値打ちがある。

[7]冠詞相当語句

[7]以下の語は冠詞と同様の機能をもつので、冠詞と併用することができない。

[7-1]不定冠詞相当語句、不定冠詞(a, an)と併用することができない

one, another, some, any, each, every, either, neither, no, 基数詞, several, many, much, most, few, a few, little, a little

Either book will do. = Either of the books will do.
どちらの本でも事足りる。

二番目の例文の either は代名詞である。

[7-2]定冠詞相当語。定冠詞(the)と併用することができない。

指示代名詞の形容詞的用法(this, that, these, those)
人称代名詞の所有格(my, our, your, his, her, their)
名詞の所有格(Tom's, my sister's, etc.)
疑問代名詞の形容詞的用法(what, which, whose)
関係代名詞の形容詞的用法(what, which, whose)
複合関係代名詞の形容詞的用法(whatever, whichever, whosever) 称号(Mr. Mrs. Miss, President, Mount(Mt.), etc.)

They may break the cease-fire agreement, in which case we will have to take more drastic action.
彼らは休戦協定を破るかもしれない。その場合、私たちはもっと根本的な行動をとらなければならないだろう。

[8]冠詞と他の品詞の語順

[8]名詞句の中では冠詞は通常、先頭に置かれるが、以下においてはそうではない。

[8-1] /what/such/ a (形容詞) 名詞

I have never had such a wonderful time.
こんな素晴らしい時を過ごしたことがない。

I know what a lucky boy I am.
自分がなんと幸運な少年かを私は知っている。

[8-1-1]ただし、複数名詞、不可算名詞が来たときは定冠詞(a)は付かない。

What fools they are! (複数名詞)
彼らはなんという馬鹿なんだろう。

Did you ever seena such weather? (不可算名詞)
あなたはこんな天気を見たことがありますか。

[8-2] /how/as/so/this/that/ 形容詞 a 可算名詞。ただし、この場合の /this/that/ は副詞であり、so と等しい。格式体である。

"How long a tape was it?" "A two-hour cassette."
「それはどれぐらいの長さのテープでしたか」「2時間のカセットでした。」

I did not expect that big a turnout.
私はそんなにたくさんの出席者を予想していなかった。

He is as great a musician as ever lived.
彼はかつての誰にも劣らない偉大な音楽家だ。

How big an apartment do you want?
どれぐらいの大きさのアパートをお求めですか。

We must do something on however humble a scale.
どんな小さな規模でもいいから何かをしなければならない。

[8-2-1] この形においては as に関する限りで、 a なしの名詞複数形が可能である。他は不可である。

He has as many books as I.
彼はわたしと同じぐらいの数の本を持っている。

×How cute girls they are!→
〇What cute girls they are!
なんてかわいい少女たちなんだ。

[8-2-2] what に書き換えられる how と such に書き換えられる so について、そのように書き換えるのが普通であり、複数可算名詞、不可算名詞についてはこの用法はなく what, suchを用いなければならない。

×I have never seen so clever boys.→
〇I have never seen such clever boys.
私はそんなに賢い少年たちを見たことがない。

一人の少年なら→
△I have never seen so clever a boy.→
〇I have never seen such a clever boy.

[8-3]/too 形容詞 a 名詞/a too 形容詞 名詞/

前者のほうがよく使われる。to不定詞と連動しないときは後者であることがある。

This is too good a opportunity to miss.
これは逸するには惜し過ぎる機会だ。

He exclaimed with a too late repentance.
彼は後悔して叫んだが、遅すぎた。

[8-4]/quite a 形容詞 名詞/a quite 形容詞 名詞/

前者のほうがよく用いられる。

He is /quite an unusual/a quite unusual/ man.
彼はとても変わった男だ。

[8-5] quite the 名詞

以下のような成句となる。

quite the contrary
quite the opposite
全くの逆

quite the thing
当世流行のもの

It's quite the thing just now.
それは今流行っています。

[8-6]/a rather 形容詞 名詞/rather a 形容詞 名詞/のいずれかの語順をとる。後者のほうがよく用いられる。通常、好ましくない意味をもつ形容詞が続く。中立の意味の形容詞と用いると悪い意味を込める。それに対して、fairy は普通に a fairly 形容詞 名詞の語順で用いられ、好ましい意味をもつ形容詞が続くと意味を弱め、中立の意味の形容詞と用いると良い意味を込める。

It was /a rather hot day/rather a hot day/.
それは暑苦しい日だった。(不快な暑さ)

It was /a fairly hot day/×fairly a hot day/.
それは暑い日だった。(快い暑さ)

"That is true," murmured Poirot, with a rather crestfallen air.
「それは本当だ」とポワロはかなり意気消沈して呟いた。

[8-7]half a 名詞

通常は half a 名詞 の語順

You suddenly realize that you have been brought up in a system that only creates evil. You just want to escape from it, but you don't know where to run. You have only got one hope―to eat half a kilo of opium, go to sleep and never wake up.
悪を生み出すだけの体制の中で育てられてきたことが突然、分かってくる。逃れたいがどこに逃げたらよいか分からない。望みは一つだけある。半キロの麻薬を飲んで、眠り、二度と目覚めないことだ。

[8-7例外]「半分欠けた」「二重の」などの意味で、形容詞と名詞の結びつきが強く、それらで一つの名詞と考えられる場合は、a half 名詞の語順になる。

a half moon
半月

a double lock
二重鍵

a double suicide
心中

[8-8]/half/double/twice/three times/ (of) the 名詞。the が付きこの語順になるときは、限定されたものの半分等の意味になる。of は通常省略される。

Java man already possessed double the brain capacity of ape-man.
ジャワ原人は既に猿人の二倍の脳容量を持っていた。

The jet can fly at twice the speed of sound.
そのジェット機は音速の二倍で飛ぶことができる。

Half the members were absent.
会員の半分が欠席した。

[8-9]/all/both/ (of) the 名詞。the が付きこの語順になると限定されたもののすべて等の意味になる。

all と both の用法はほぼ同様である。ただし、both においては限定されたものにおいても the は省略される傾向にある。all において the を省略すると限定されない一般のもののすべての意味になる。

All (of) the students are coming to the party.
その学生たちは皆、パーティーに来ることになっている。

Both (of) (the) students are coming to the party.
その学生は両方ともパーティーに来ることになっている。

All the students hate exams.
その学生たちは皆、試験が嫌いだ。

All (無冠詞) students hate exams.
(一般に)学生は皆、試験が嫌いだ。

We walked all the way.
わたしたちはその道の全部を歩いた。

[9]冠詞の省略

[9]概して日常的によく使われる表現では冠詞が慣用的に省略されるようになる。

[9-1]無冠詞の可算名詞複数形、集合名詞、不可算名詞で一般のものを指す。つまり、総称。

(無冠詞) Nuclear weapons can extinguish all the living things on the earth.(可算名詞複数形)
核兵器は地球上のすべての生物を絶滅させうる。

(無冠詞) Cattle live on grass.(集合名詞)
牛は草を常食にする。

(無冠詞) Money talks.(不可算名詞、物質名詞)
カネはものを言う。

(無冠詞) Beauty is in the eye of beholder.(不可算名詞、抽象名詞)
美は見る人の感覚次第である。

ところで、上の例文の the eye は前述の普通名詞を抽象名詞化する用法である。だから、単数形になった。

[9-1-1] 無冠詞の one, man, woman はそれだけで総称を表すことがあるが、格式体である。

Woman lives longer than man in most countries.(格式体)→
Women live longer than men in most countries.(普通体)
ほとんどの国で女性は男性より長生きする。

[9-2]呼びかけの名詞と、呼びかけに限らず、家族親戚内の会話の中で家族、親戚を表す名詞。呼びかけるような状況と家族親戚内なら the, my, your などを付けなくても限定されるため。

Good morning, (無冠詞) Doctor!
おはようございます、先生。

Thank you, (無冠詞) Uncle.
ありがとう、おじさん。

このように呼びかけの場合は固有名詞化され大文字から始めることがある。

(無冠詞) Uncle is coming tomorrow.
おじさんは明日、来ることになっている。

Has (無冠詞) mother gone out?
おかあさんは出かけたの。

家族親戚以外の他人が聞くなら、Has your mother gone out? となる。

[9-3]唯一の役職を示す名詞が補語、同格、as の目的語になっている場合。

He is (無冠詞) host of the parliament this year.(補語)
彼は今年のその会議の主催者だ。

They elected him (無冠詞) captain of the team.(補語)
彼らは彼をチームの主将に選んだ。

Victoria, (無冠詞) queen of England was noted for her wisdom.(同格)
イングランドの女王のビクトリアは賢明さで知られていた。

He /served/acted/ as (無冠詞) principal of our school for five years.( as の目的語)
彼は5年間わが校の校長を務めた。

She resigned as (無冠詞) chairperson of the bank.( as の目的語)
彼女はその銀行の頭取を辞任した。

No less a figure than John Foster Dulles, (無冠詞) head of the State Department was part of the firm of lawyers acting for the United Fruit Company.(同格)
国務省の一番のお偉いさんであるジョン・フォスター・ダラスのような人物までもがユナイテッド・フルーツ社を弁護する弁護士事務所の片棒を担いでいた。

[9-4]称号+固有名詞。称号が冠詞のように機能しているからである。

King George
Queen Elizabeth
Professor Benson
/Mount/Mt./ Everest
/Lake Victoria/the Lake of Victoria/

[9-5]名詞の対句では無冠詞。young and oldのように形容詞が名詞化され対句になるときも無冠詞。

I pronounce you man and wife.
あなた方を夫婦と宣言します。(教会で牧師が)

Mother and child are doing well.
母子ともに健康です。(産後に)

They went hand in hand.
彼らは手に手を取って行った。

[9-6]日常的な道具、手段、食事、乗り物、施設…などを表す名詞がそのものではなく機能的側面を表す場合無冠詞になる。抽象名詞化されるとも言える。

We go to church on Sunday.
私たちは日曜日に礼拝に行く。

どこの教会に行くかは問題にならず、礼拝に行くことが問題になる。

He is /in hospital(英)/He is in the hospital(米)/ now.
彼は今、入院中です。

どこの病院に入るかは問題にならず、入院することが問題になる。(米)の the が付く表現は、go to the doctor と同様の「もよりの」という意味の状況から限定されて the が付く表現である。

go to bed
就寝する

get out of bed
起床する

It's time for bed.
寝る時間だ。

それらに対して、

Don't sit on the bed.
ベッドに座るな。

これは機能的側面ではなくベッドそのものを表すから冠詞が付く。

He came by /bus/car/train/plane/.
彼は/バスで/車で/電車で/飛行機で/来た。

Are you going by bicycle or on foot?
あなたは自転車で行きますか、歩いて行きますか。

go to war
戦争を始める

Breakfast is ready.
朝食ができている。

He invited us /to/for/ tea.
彼は私たちをお茶に招いてくれた。

I had an early lunch.
私は早い昼を食べた。

修飾語が付くと、複数ある種類の中の一つを指すため不定冠詞(a)が付いた。

The lunch I ordered hasn't come yet.
私が注文したランチはまだ来ていない。

句・節に後ろから修飾されて限定されるため定冠詞(the)が付いた。

[9-7]慣用句。日常でよく使われる句で慣用的に冠詞が省略されたもの。[9-6]と重なる。

by /accident/chance/
偶然に
on duty
勤務中で
make fun of -
からかう
take care of -
世話をする
take place
起こる

He is always ready to find fault with other people.
彼はいつも他人のあらさがしをしようと手ぐすね引いている。

[9-7-1]無冠詞となった名詞に修飾語が付くと冠詞が付くことがある。付かないこともある。

by a lucky chance
幸運にも

He greeted me with (無冠詞) warmth.
彼は私に暖かく挨拶した。

He greeted me with a warmth that was surprising.
彼は驚くほどの暖かさで私に挨拶した。

これは複数ある種類の一つであることを示す a が付いた。

He greeted me with the warmth that I was accustomed to.
彼はいつもの暖かさで私に挨拶した。

これは後続する節によって限定されることを示す the が付いた。

He takes (×a) good care of his little brother.
彼は弟をとてもかわいがっている。

これには a が付かない。take care of がかなり慣用化しているためである。

[9-8]新聞の見出し、掲示、本の題名、章名など

MAN KILLED ON MOUNTAIN
男性、山で死亡

[9-9]/a kind of/a sort/ ofに続く名詞。それらに続く可算名詞に a を付けるのは略式体で軽蔑を表す。

He is just the kind of (無冠詞) person I wanted.
彼は私がちょうど欲しいと思っていた通りの人です。

This is a new kind of (無冠詞) melon. = This is a melon of a new kind = This melon is of a new kind.
これは新種のメロンだ。

What kind of a job is that?
それはどんな仕事だ(くだらなそうだ)。

[9-10]形容詞のように扱われる名詞は無冠詞になることがある。例えば、以下のような場合。

[9-10-1] そのような名詞は、enough に修飾される場合、形容詞と同様に、無冠詞になるだけでなく、enough は後置される。

He was fool enough to marry her.
彼は愚かにも彼女と結婚した。

[9-10-2] more に修飾される場合、形容詞と同様に無冠詞になる。

Mary is more child than woman.
メアリーは女っぽいというより子供っぽい。

[10]冠詞の反復

[10-1]冠詞 単数名詞 and 冠詞 単数名詞なら二つの異なるものを指し、冠詞 単数名詞 and 単数名詞なら一つのものを指す。

They are a novelist and a playwright.
彼らは小説家と劇作家だ。

He is a novelist and playwright.
彼は小説家で劇作家だ。

[10-1-1]一つのもので慣用句になったものがある。

a cup and saucer
受け皿付きカップ
the bread and butter
バター付きパン
a needle and thread
糸付き針
the whiskey and soda
ウイスキーのソーダ割り

[10-2]冠詞 形容詞 and 冠詞 形容詞 単数名詞なら二つの異なるものを指し、冠詞 形容詞 and 形容詞 単数名詞なら一つのものを指す。

a white and a black dog
白い犬と黒い犬

a black and white dog
黒と白のまだらの犬

[10例外]二つの異なるものであることが明らかな場合は後者で二つの異なるものを指すことがある。その場合でさらに名詞を複数形にすることがある。

the 19th and the 20th century = the 19th and 20th /century/centuries/
十九世紀と二十世紀

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